東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)402号 判決
一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の審決取消事由の存否について判断する。
成立に争いのない甲第二号証、第三号証の一・二、第四号証によれば、次のとおりの事実が認められる。
すなわち本願発明は、いわゆる「フロート法」による板ガラスの製造にあたり、従来よりも厚みの薄い板ガラスを得ることを目的とし、板ガラスの厚みを減少させるための構成として、<1>ガラスの厚さと幅との両方が減少している位置でガラスに縁部での力を加えること、<2>リボンの厚さと幅との両方を徐々に減少させることを確実にすること、を要件としており、本願明細書第二図、第四図、第六図に実施例として示されているところによつても、発明の詳細な説明としてそれぞれ具体的に説明された数値との照応からみて、ガラスリボンが厚さと幅と共に徐々に減少しつつある行程にわたる範囲の途中で、ガラスリボンの両縁部の適宜な個所に適宜な数の対応するロールを適用して、ガラスリボンの流速を加速すると共に、幅の減少を抑制する作用を与えており、ガラスリボンが硬化して厚さと幅の寸法変化が生じなくなる部分(前記第二図でいえば仕切壁31近傍)には、何らの手段も講じられていないところからみても明らかである。
これに対し、引用例発明は、その図面に示された実施例からみても再加熱してガラスリボンを軟化させ、これに引出しロール27、28のけん引力を加えて更に薄くする際、ガラスリボンの幅を維持するために、塑性状態にあるガラスリボンの両側縁を対応するロール83、84で把持させているが、この把持ロールから先の行程ではガラスリボンの幅が減少しないものであるから、右ロール把持部のガラス流速と引出しロール位置におけるガラスリボンの流速は同一であるとみられる(もし流速が同一でなければ、塑性状態のガラスリボンはけん引力の作用で更に厚さと幅が変化する筈であるが、そのようには図示、説明されていない)。そうしてみると、引用例発明では、ガラスリボンの厚さと幅が減少する行程の終端に把持ロール83、84を適用してガラスの幅を一定に維持するために作用させているものである。
したがつて引用例発明の方法におけるロールは本願発明の方法におけるロールに期待されるような技術的思想を具備しておらず、発明として構成を異にし、かつ、その作用効果をも異にするものといわねばならない。
そうすると、本願発明の新規性を否定し、本願発明を引用例発明と同一とした審決の判断は誤つており、違法であつて取消されねばならない。
三 よつて、審決の違法を理由にその取消を求める本訴請求を認容することとする。
〔編註その一〕 本願発明に関する事項は左のとおりである。
一 特許庁における手続の経緯
原告は、名称を「板ガラス製造方法」とする発明(以下「本願発明」という。)につき、昭和四五年七月二八日に、イギリス国における一九六九年(昭和四四年)七月二八日および同年八月一九日の特許出願に基づく優先権を主張して、特許出願(昭和四五年特許願第六五五一四号)したが、昭和五〇年二月一九日拒絶査定を受けたので、同年六月一七日審判請求をし、昭和五〇年審判第五一四七号事件として審理されたが、昭和五五年八月二二日「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は同年九月三日原告に送達された。なお、出訴期間として三か月が附加された。
二 本願発明の要旨
溶融ガラスを加速するけん引力により溶融ガラスの層を溶融金属の浴によつてリボン状で前進させ、リボンを徐々に冷却し、けん引力を調整することによりまたリボンの幅を制御するように加速するガラスに縁部での力を加えることによりリボンの厚さを制御して六mm以下の厚さの板ガラスを製造する板ガラス製造方法において、ガラスの厚さと幅との両方が減少している位置でガラスに縁部での力を加え、それで縁部での各力の外向きの分力が幅の減少を減ずるように働き、縁部での力がリボンを徐々に加速させかつリボンの幅と厚さとの両方を徐々に減少させることを確実にすることを特徴とする板ガラス製造方法。
〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。
別紙一
(本願明細書第一図面ないし第六図面)
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別紙二
(引用例明細書第一六図第一七図)
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